| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-443

消雪時期がもたらす局所的な開花フェノロジーの変動が高山性カタクリの集団構造に与える影響

*山岸洋貴(北大・院・環境科学),Taber D.Allison (Massachusetts Audubon Society), 大原雅(北大・院・環境科学)

高山ではわずかな地形の不均一性が局所的な積雪量ならびにその後の消雪時期を変化させる。この局所的な消雪時期の違いは、そこに生育する植物の生長・開花時期や期間に影響を及ぼす。このように生じた集団内での開花フェノロジーの異なりは、集団内の花粉による遺伝子流動を制限し、また訪花昆虫相や量の季節的な変化に伴い結実率や形成される種子の質に違いを生じさせる可能性がある。そこで本研究は北米コロラドロッキー山脈に自生する高山性カタクリ(Erythronium grandiflorum) を対象種として集団内の遺伝構造ならびに種子の遺伝的多様性を明らかにし、消雪時期がもたらす開花フェノロジーの変動が高山植物集団内の遺伝的構造に与える影響を明らかにするために行った。標高3400m付近に自生する集団内に調査区を設置し、2年間開花フェノロジーを観察した結果、22個の開花フェノロジーが異なる集団内パッチが確認され、それらを開花順にEarly・Middle・Lateの3段階のグループに区分した。また各パッチから開花個体の葉組織及び形成された種子を採取し遺伝解析を行った。葉組織を用いた酵素多型分析により集団内パッチ間には遺伝的分化が生じていることが明らかになり、この分化には消雪時期に伴う開花フェノロジーの違いが影響していることが示された。またマイクロサテライトマーカーによる種子を用いた遺伝解析から開花フェノロジーグループ別に花粉親の多様性や自殖率を求め、消雪時期の変動を反映した訪花昆虫相や行動などを推測した。以上より消雪時期の変動が集団内の遺伝構造に影響を与える可能性を示した。


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