| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-484

ゲンジボタルLuciola cruciataの発光周期変異とnos遺伝子発現

*大槻朝(東北大・生命科学),横山潤(山形大・理),大場信義(大場蛍研究所),近江谷克裕(北大・医),河田雅圭(東北大・生命科学)

日本に広く分布するゲンジボタルはその発光周期に地理的変異があることが知られ、それぞれ2秒型(西日本型)、4秒型(東日本型)およびその2つの境界に分布する3秒型(中間型)という生態型に分けられる。生態型によりメスの発光周期に対するオスの選好性が異なることが行動実験により示されていることから、発光周期と選好性の違いは生態型間の交配前隔離として働いていると考えられる。ルシフェリン‐ルシフェラーゼ反応によって起こるホタルの発光反応の制御には一酸化窒素(NO)が関わっていると考えられ、一酸化窒素合成酵素(NOS)の酵素機能や発現量に生態型間で違いがあることが発光周期の地理的変異の原因になっているのではないかと予想される。これまでに、決定したゲンジボタルNOSのexon全塩基配列の情報をもとにして、nos遺伝子によるゲンジボタル種内の系統関係を調べたところ、生態型や地理的分布を反映した関係が見られた。しかし各生態型に特異的と考えられるアミノ酸置換などの変異は発見できず、酵素機能と発光周期との対応はわかっていない。そこで、発光器におけるnos遺伝子発現量の測定をReal-Time PCRにより行い、発光周期の違いとどのような関連があるのか明らかにすることを試みた。nos遺伝子発現量を、互いに発光周期の異なる西日本型、東日本型のゲンジボタル各野生集団で測定し比較を行っている。また、発光器以外の部分(頭部、胸部、腹部)でのnos遺伝子の発現や、成虫のような明滅周期を示さない幼虫の発光器での発現も調べている。今回は現在進めているこれらの実験についての結果を報告する予定である。


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