| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-487

左右極性の量的変異が母親を淘汰する

*宇津野宏樹, 浅見崇比呂(信州大・理)

外見が左右対称な動物でも、その多くは左右非対称な内臓を持つ。内臓の左右が反転した突然変異体がまれに見つかるが、左右の反転した鏡像体は動物界全体で一般的に進化していない。これは、鏡像変異が何らかの理由で淘汰されることを示している。巻貝では左右逆に発生する種(左巻種)がくり返し進化したが、その数は非常に少ない(<10%)。私たちはこれまでに、モノアラガイで遺伝的背景をそろえた左巻変異と野生型を比べ、発生の左右反転それ自体が殻の形を変え、孵化率を下げることから、左巻を産む遺伝子型の適応度が低いことを実証した。なぜ左巻の孵化率が低いのだろうか。遺伝的背景を均一にした野生型と左巻変異体で8細胞期のらせん度(大割球と小割球のずれる角度)を測定し、量的な形の比較を行った。その結果、左巻のらせん度は右巻より平均的に小さく、発生パターンが鏡像対称ではないことがわかった。また、らせん度と孵化率の間に正の相関が見つかった。これは、発生パターンが鏡像対称からずれることが原因で、左巻を産む母親の遺伝子型の適応度が低下することを示唆している。


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