| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-501

個体ベースによる空間個体群動態

*皆藤千穂(奈良女院 人間文化),高須夫悟(奈良女 理)

生態系の中には、個体群動態の仕組みをよく理解することで感染症や病害虫の拡大、稀少生物種の保全といった我々の身近にも応用がきく問題が数多く存在する。それを理解するための手段として、「アルゴリズムモデル」の一種である個体ベースモデル(Individual-Based Model、以下IBM)がある。IBMとは計算機中に仮想的な生物「個体」を構築し、確率過程に基づいて生物個体の出生と死亡のシミュレーションで行うものである。

本研究は、個体レベルの出生と死亡を機械論的に記述して実行することで集団レベルの現象を理解することを試みる。具体例として、1種系Rickerロジスティックを2次元空間上のIBMとして構築したモデルを考える。個体はそれぞれ、自分の周囲にどれくらい他個体が存在するかを表す局所密度に依存した出生率と死亡率をもち、新規出生個体は一定のルールで親から分散するというモデルである。それによって、個体レベルの出生と死亡が集団レベルの現象にどのように反映されるかについて解析した。特に2個体間の距離に注目して、空間分布パターンの特徴がどのように変わるかを調べた。

実際の生態系では、2種以上が相互作用することで複雑な空間パターンが生じる例が知られているため、現在の1種系のモデルから寄宿者、宿主者系のような2種系へのモデルへと拡張し、螺旋状といったパターン形成を理解する方法について議論する。


日本生態学会