| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-509

富栄養化による2種藻類競争系のレジームシフト

*川口喬(立命・理工),中島久男(立命・理工)

生態系はこれまでの状態から急激に変化することがある(Scheffer et al. 2001など).このような現象はレジームシフトと呼ばれており,突発的で不可逆な状態変化を示すのが特徴である.レジームシフトが生じるのは,生態系がある環境条件の下では複数の安定な状態(例えば湖沼の場合,水の澄んだ状態と濁った状態など)を持ち,それらの間を生態系の状態が遷移するためだと考えられている.近年,多くの生態系において生態系レジームシフトの発生が報告され,これまでとは異なる意味での生態系管理に対する問題点が指摘されている.

水界の富栄養化により定常状態で優占する植物プランクトンがどのように変化するのかを調べるため,2種の植物プランクトンが2種類の資源(光と栄養塩)を介して競争している系の数理モデルを構築した.モデルの解析にはHuisman & Weissing(1995)で用いられた方法を利用した.

植物プランクトンの増殖率が0になるときの水中の栄養塩濃度と湖底での光強度の関係はZero Net Growth Isocline(ZNGI)と呼ばれる曲線で表すことができる.そのため植物プランクトンが存在する定常状態は,必ずZNGI上に存在し,2種共存の定常状態は2つのZNGIの交点に対応している.

2つのZNGIが交わっていると,定常状態で優占する種が富栄養化により入れ替わることが示された.このとき優占種の入れ替わり方には,2種共存状態を経て連続的に入れ替わる場合と,一方の種が優占している状態からもう一方の種が優占している状態へと不連続に入れ替わる,いわゆるレジームシフトを起こす場合があることがわかった.さらに2つのZNGIが複数回交わる場合,富栄養化による優占種入れ替わりのレジームシフトが必ず1度以上発生することが示された.


日本生態学会