| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-554

ヤエヤマシロアリの遺伝的カスト決定機構

*星 真大,北出 理(茨城大・理・生物)

ヤマトシロアリ属Reticulitermesの個体は、卵からの孵化後、2齢の幼虫期間を経て、翅芽を持ち、最終的に有翅虫に至る「ニンフ」と、翅を持たない「ワーカー」のいずれかに分化する。このようなカースト決定は、これまでコロニー内の他個体によるフェロモンの作用などの環境要因によるものと考えられてきた。しかし最近、ヤマトシロアリR. speratusのワーカー・ニンフ双方に由来する幼形生殖虫を用いた交配実験から、(1)生まれた幼虫は、両親の由来するカーストと自身の性により明確に異なる分離比で両カーストに分化し、遺伝的要因がカースト決定に強く関わっていること、(2)この分離比はX染色体上の1遺伝子座2対立遺伝子の遺伝モデルで説明可能なこと、が明らかになった(Hayashi et al., 2007)。また同属のカンモンシロアリR. kanmonensis、オキナワシロアリR. okinawanusにおいても、ヤマトシロアリの場合とほぼ同様の結果が得られている(Kitade他、未発表)。

本研究では、本属ヤエヤマシロアリR. yaeyamanusを用いて同様な交配実験を行った。交配パターンは、ニンフ型(ニンフに由来する)生殖虫同士、ワーカー型生殖虫同士、ニンフ型オスとワーカー型メス、ニンフ型メスとワーカー型オス、の4通りを設けた。生まれた卵はワーカーに育てさせ、3齢に達した時点で個体の性とカーストを判別した。

得られたヤエヤマシロアリのカースト・性の分離比は、ワーカーの割合と雄の割合が若干多くなったがヤマトシロアリの場合と基本的に同じ傾向を示した。本属4種での検証から、この属のカースト決定は同一の機構を採用していると考えられる。少なくともこの属が日本列島に分散する以前の共通祖先でこの機構が獲得されたと考えられる。


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