| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-593

アナジャコと生きるー宿主の異なるマゴコロガイの成長

*伊谷行(高知大・教育),山田ちはる(高知大・黒潮圏),楪葉顕信,岩田洋輔(高知大・教育)

マゴコロガイ Peregrinamor ohshimaiはウロコガイ上科に属する二枚貝で、干潟の巣穴内に生息するアナジャコ科のアナジャコ類に付着する。ハート型の特徴的な形態を持つ貝はメスであり、宿主に1個体だけ付着する。一方、オスは矮雄であり、メスの足糸付近に複数個体が付着する。メスは宿主の胸部に付着し口の近くに水管を伸ばして餌の横取りを行う寄生者であり、その付着位置の空間的制約のため殻高が低く殻幅が伸長した背腹に扁平な形態をしている。また、殻長は宿主が巣穴内で方向転換のために身体を折り曲げる行動のために制約を受けると考えられる。本研究では、形態を宿主に強く依存するマゴコロガイが異なる種を宿主とした際に、宿主の成長の違いがマゴコロガイのメスの成長と形態にどのような影響を与えるかを記述する。なお、本種は宿主が脱皮をする際に足糸を切って移動し、同じ宿主個体とともに成長することが明らかになっている。

大型種のアナジャコ Upogebia major と中型種のヨコヤアナジャコ U. yokoyaiに寄生するマゴコロガイの2集団を比較したところ、2集団とも宿主の甲長とマゴコロガイのメスの殻長の間に直線的関係があり、宿主の甲長がマゴコロガイの成長を規定することが明らかになった。回帰直線はほぼ同じであったが、アナジャコに寄生するマゴコロガイでは殻長18mmを超える大型の個体が見られたのに対し、ヨコヤアナジャコに寄生するマゴコロガイでは、殻長12.5mmが最大個体であった。どちらの集団も殻長―殻幅比には差がなく、貝殻の形態に違いは見られなかった。マゴコロガイは宿主のサイズにより繁殖成功が大きく異なることが予測され、このことは本種が小型種のコブシアナジャコU. sakaiiへの極めて低い寄生率を説明できると考えられる。


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