| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-603

九州における国内移入魚ハスの定着メカニズムの解明

*佐藤真弓(九大・院工),河口洋一(九大・院工),中島 淳(九大・院工),向井貴彦(岐大・地域),鬼倉徳雄(九大・院農)

国外から移入された外来生物が生態系にもたらす負の影響は、魚種ではオオクチバスやブルーギルが良く知られた例であるが、国内における在来魚種の本来の分布域外への移入については、これまであまり問題視されていない。しかしながら、国内移入魚は国外移入魚と同様に、在来魚種や生態系に深刻な影響をもたらす可能性が懸念され、その定着条件を把握することは、これまで見過ごされてきた国内移入魚へのリスク対策として重要である。

ハス(Opsariichthys uncirostris uncirostris)は、コイ科に属する魚食性の淡水魚で、九州へは琵琶湖産アユの放流に混じって移入されたと考えられ、河川以外では有明海沿岸域のクリークと呼ばれる農業用水路で生息が確認されている。クリークには、希少種を含む多くの淡水在来魚種が生息しており、魚食性であるハスのこれら在来魚種への捕食の影響が懸念される。そこで本研究では、佐賀市内の有明海沿岸域クリークにおける本種の生息状況を調査し、出現・非出現に影響を与える環境要因を推定した。更に調査地域における出現予測マップの作成を行った。

2005年〜08年のクリーク46地点における野外調査の結果、15地点において生息が確認された。また、流速、水位変動、標高、取水口までの距離、建物用地の割合、幹線交通の割合、外来魚種数、在来魚種数を説明変数としてロジスティック回帰分析を行ったところ、標高と取水口までの距離で、最もハスの出現が予測される回帰式が得られ、また取水口までの距離が有意な負の効果を示した。このことから、クリークにおけるハスの定着には、局所的な環境要因よりも、河川との連結性の影響が大きいと考えられ、今後、在来魚種の保全を考える上で考慮する必要があるであろう。


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