| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-611

生育確率予測モデルを用いた侵略的外来植物の駆除方法の検討 -鬼怒川におけるシナダレスズメガヤを例に-

*一瀬克久,石井潤,西廣淳,鷲谷いづみ(東大院・農・保全生態)

利根川水系鬼怒川の中流域(栃木県)には大規模な砂礫質河原が残存し,1990年代初頭までは比較的広く河原固有植物(たとえば,カワラノギク,カワラニガナ)の生育が認められた.しかし,その後,南アフリカ原産のイネ科草本シナダレスズメガヤ(以下,シナダレ)が侵入し,被陰による競争的排除や株元への砂の堆積作用による基質の改変を通じて河原固有植物の生育を脅かしている.シナダレは,中山間地域で法面緑化に利用されており,その場で生産された種子が流出して生育適地へ侵入・定着し,さらに下流へ分布拡大を繰り返していることが指摘されている.

河原固有植物と砂礫質河原の保全には,シナダレの侵入・生育適地を明らかにした上で,効率的な除去,分布拡大の抑制手法を確立することが急務である.そこで本研究では,シナダレの生育確率の高い場所を予測するモデルを構築し,生育確率地図を作成し,モデルを用いて河原の地盤の切り下げおよび上流側シードソースの除去によるシナダレの生育確率低減効果を検討した.まず,2002,2006年の「河川水辺の国勢調査」の植生図と標高データを用い,2006年のシナダレの有無を目的変数,2002年の植生タイプ,地形条件,上流側シードソース量を説明変数とした一般化線形モデル(GLM)を用いてAICに基づくモデル選択を行った.最適モデルはAUC=0.76の実用可能なモデルであった.次に,2006年に地盤の切り下げおよび上流側シードソースの除去を行った場合の2010年の生育確率を予測した.その結果,生育確率低減に対して地盤の切り下げの効果は低いこと,および特定の保全上重要な地点への侵入の抑制には,上流側50 mのシードソースの除去が大きな効果をもつことが明らかとなった.


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