| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-618

市街地に見られるシダ植物は温暖化指標生物になりうるか?

*村上健太郎(きしわだ自然資料館), 森本幸裕(京都大学大学院・地球環境学堂), 堀川真弘(森林総合研究所・植物生態研究領域)

シダ植物の巨視的な分布は気候によって決まるといわれており,地球温暖化やヒートアイランド現象による気候温暖化の指標となりうる。そこで,本研究では,市街地に生育する身近なシダ植物の種組成を把握し,気候との関連を調査した。

調査地点:近畿地方(最南:和歌山県串本町〜最北:京都府京丹後市)の駅周辺の市街地部121箇所

調査方法:各調査地点において,排水溝の内壁,石垣,建物間の隙間を対象としたシダ植物の種組成調査を行った。調査地点の中心を駅として,半径1 km以内に見られるシダ植物群落を10〜30箇所サンプリングし,出現種をすべて記録した。調査地点ごとの種ごとの出現確率を優占度と見なし,メッシュ気候値データ2000を用いて,気候データとの関連を調べた。優占度と気候データとの関連は正準対応分析(CCA)を用い,出現頻度5以上の種(35種)について解析した。

結果と考察:CCAの第1軸に沿った変化は,TMC(最寒月の最低気温)との関連が強く,第2軸に沿った変化はPRW(冬季降水量)との関連が強かった。また右上(第1象限)にいくほどWI(暖かさの指数)が大きく,左下(第3象限)ほどCI(寒さの指数)が大きい傾向が見られ,右下(第4象限)にいくほどPRS(夏季降水量)が大きかった。第1象限に含まれる種にはイヌケホシダ,ホウライシダ,カニクサが挙げられ,第4象限にはイシカグマなどの亜熱帯性シダが含まれた。第3象限に含まれる種は多数あるが,特に出現頻度の高いものとして,イヌワラビ等が含まれた。よって,現在,イヌワラビ等が優占する場所では,温暖化によるWIの増加とともに,これらにかわって,イヌケホシダ等が優占することが推定される。夏季降水量が増加すれば,イシカグマなどの亜熱帯性シダの多くも移入・増加する可能性がある。


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