| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-625

外来草本種Clidemia hirtaの半島マレーシア・パソー森林保護区への侵入パターン

*藤沼潤一(北大・環境科学),Rhett D Harrison (University of Miami)

低木種Clidemia hirtaは、外来種として半島マレーシアのパソー森林保護区へ侵入している。パソーでは、在来のイノシシSus scrofaによって撹乱された土壌の分布とC. hirtaの分布が相関していることから、この土壌撹乱がC. hirtaの侵入を促進する要因の1つとして考えられている。

保護区周辺のプランテーションで採餌しているイノシシは、保護区のエッジ付近でより頻繁に土壌を撹乱していると考えられる。このことから、大きな空間スケールでのエッジエフェクトとして、土壌撹乱とC. hirtaの侵入が、森林内に影響を及ぼしている可能性が先行研究において予想されている。

撹乱土壌とC. hirtaの分布を決める要因を明らかにすることと、エッジエフェクトの存在を検証することを本研究の目的とした。1kmのトランセクトを保護区のエッジを起点に保護区内へ3本設定し、湿地・林冠ギャップ・撹乱土壌およびC. hirtaの分布を調べた。

一般化線形混合モデル(GLMM)を用いた解析の結果、撹乱土壌は、保護区のエッジおよび湿地に近づくほど多く出現し、林冠ギャップから遠ざかるほど多く出現する傾向が示された。C. hirtaは、撹乱土壌が広く分布する場所ほど多く、また湿地および林冠ギャップに近づくほど多くなる傾向が示された。

エッジからの距離に対し、撹乱土壌およびC. hirtaの量は有意な負の相関を示したことから、イノシシによる土壌撹乱を介したエッジエフェクトの存在が示唆されたといえる。またエッジからの距離が1kmの地点でも撹乱土壌とC. hirtaが分布していることから、このエッジエフェクトは1kmを超える大きな空間スケールで保護区内に影響していることも示唆された。


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