| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-635

異なる水域に生息する外来カメ類と在来カメ類の捕獲方法

*佐藤方博(生態工房),庭野裕(生態工房),林真帆(生態工房)

近年、都市や公園の水辺ではミシシッピアカミミガメやカミツキガメなどの外来カメ類の分布が拡大し、在来のカメ類やその他の在来水生生物に対する悪影響が懸念されている。しかし、野外に定着した外来カメ類に関して、市民や自治体による短期間で局所的な駆除活動は行われているものの、個体を効果的に除去する方法は未だ確立されていない。このため、広域的には外来カメ類の根絶や分布域の縮小には至っていない。一方、1998年の東京都レッドデータによると、在来種ニホンイシガメは絶滅危惧種、クサガメとスッポンは希少種に指定され、都内の水辺においては在来カメ類の早急な保全対策が必須となっている。そこで、本研究では野外に定着した外来カメ類を効果的に除去するために、都市の流水域と止水域の2つの異なる環境でカメ類を対象とした様々な捕獲方法を行い、外来カメ類の捕獲効率を検証した。

ワナ掛けによる捕獲はモンドリに誘引餌として魚のアラ、スルメ、キャットフードの3種類を使用した場合と、誘引餌のいらない定置網を使用した場合の計4種類で行った。捕獲調査は流水域では1.3kmの用水路(玉川上水、東京都杉並区−三鷹市)、止水域では0.2haの湧水池(渋谷区立鍋島松濤公園)を調査範囲とし、2008年5月から10月までの各月にワナ掛けを各種3日間ずつ流水域と止水域で同時に実施した。ワナ掛けによって捕獲したカメ類は種同定、雌雄判別、外部形態を記録した後、個体標識をして再放逐した。

4種のワナ掛け方法のうち流水域において捕獲率が最も高かったのは定置網で、その次にモンドリに魚のアラを誘引餌とした方法であった。一方、止水域においてはモンドリに魚のアラを誘引餌とした方法の捕獲率が最も高く、その次が定置網であった。これにより、止水域と流水域においてカメ類の効率的な捕獲方法が異なることが明らかになった。


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