| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-223

異なる光・栄養塩環境下におけるシカの林床植物への影響-大規模密度操作実験による検証-

*日野貴文,揚妻直樹,日浦勉 (北大・苫小牧研究林)

森林には林冠ギャップにより林床植物の生産性が高い場所や、林冠が欝閉した生産性の低い場所が存在する。生産性の違う場所間において、シカの採食圧に対しての林床植物の感受性は異なる可能性がある。また、同じシカ密度であってもその場所の生産性によってシカの利用頻度は違い、林床植物に与える影響も異なると考えられる。このように、シカの林床植物の多様性への影響はシカ密度だけでなく生産性の違いによっても影響を受ける可能性がある。しかし、シカの密度と生産性の両方を制御する野外操作実験が難しいため、野外検証例はほとんどない。本研究では、シカ密度と生産性の勾配によって林床植物への変化を明らかにすることを目的とし、北海道大学苫小牧研究林内の約25haにおいてシカ密度と林床植物の生産性を操作する大規模野外操作実験を行った。シカ密度は高密度区・低密度区・排除区の3段階設定した。生産性の操作は高木の伐採と施肥(窒素添加)を行い、3つのシカ密度毎に4つの処理区(無処理、伐採、施肥、伐採・施肥)を設置した。そして処理後の3年間の林床植物の出現種数、食害率、主要種の植生高を調査した。

食害率は伐採区と伐採・施肥区で増加しそれとともにシカの嗜好種の植生高が低くなった。林床植物の被度は伐採区と伐採・施肥区で増加しており、林床植物のバイオマスの増加に伴ってシカの利用頻度が増加し伐採区での食害率を増大させたと考えられた。しかし、2005-7年の林床植物の種数はシカ密度間に有意な差はなかった。一方、生産性処理に対して林床植物の種数は施肥区では年々減少し伐採区では年々増加した。また、林床植物の生活史によってシカ密度と生産性処理への応答が異なった。これらの結果から、生産性が異なる場所におけるシカの林床植物への影響について考察する。


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