| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-228

埋設式巣箱を用いた野ネズミ種子消費量の推定−小川学術保護林における10年間の年変化−

*奥村みほ子(新潟大 院 自然),安田雅俊(森林総研),福井晶子(日本野鳥の会),柴田銃江,正木隆(森林総研),箕口秀夫(新潟大 自然科学系)

今までブナ林において野ネズミの餌メニューや消費量の年変化とその要因は明らかにされていない。本研究の調査地である小川学術参考林は太平洋側の典型的なブナ林で,ブナだけでなく,他のブナ科樹種やシデ類,カエデ類,サクラ類等が生育している。そこで,様々な種子を食料とすることができる生息環境においてネズミがどんな樹種の種子をどれくらい利用しているのか明らかにするため,林床に埋設式巣箱を設置し,内部に残された種皮などの餌の破片から野ネズミの種子消費量を推定した。1998年秋,61個の埋設式巣箱(以下,巣箱)を設置し,翌年から春と秋の年2回,2005年12月から2006年10月までは2,4,6,7,および10月の計6回内容物を回収した。回収した内容物は樹種毎に分類,計量しネズミの消費量を推定した。また,回収と同時期にネズミ調査を3晩連続の標識再捕獲法で行った。巣箱は調査地に生息するアカネズミとヒメネズミにより利用された。消費された種子は多いものからコナラ,ブナ,イヌブナ,クリ,ハクウンボク,そしてサクラの6種であった。この6種の種子消費量は年と季節(夏期(5〜10月),冬期(11〜4月))により大きく変動した。ネズミは一年を通してコナラを食べ,夏期(31〜90%)より冬期(73〜99%)に消費量が多かった。夏期にはサクラの消費量が増えた。2000,2005年のブナ,2004年のクリの豊作年には,それぞれの種子消費が増えた。しかし,ネズミはコナラを1年を通じ利用しており,豊作となった種子の消費量が増えることがあっても,餌メニューが豊作となった樹種に完全にシフトすることはなかった。


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