| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-235

食草・イヌガラシの形態に依存したモンシロチョウ属の卵分布とその運命

*恩田裕太(筑波大・生物),渡辺 守(筑波大・生物)

チョウ類の雌は、食草を周囲の植物から見分け、産卵に適した部位を選択している。モンシロチョウやスジグロシロチョウの場合、雌は卵を1個産下するごとにはばたいて移動するので、食草であるイヌガラシの同一の葉に連続して産卵することは稀となる。したがって、卵を1個産下するたびに雌は食草選択を行なっているといえよう。イヌガラシの成長は春から秋まで連続し、その期間中、開花と種子生産が行なわれている。ただし、生育場所が路傍のため、しばしば雑草として刈り取られてしまう。そのような株は、再び芽吹いて地上部を成長させたり、根元部分から多数の茎に分けつしたりすることがあるため、同じ地域においても様々な生育段階の株が常に存在している。本研究では、産卵対象となるイヌガラシの株の高さと幅を測定し、花序数や果実の成熟度合いから、形態によって発育段階を5段階に分類した。また、モンシロチョウとスジグロシロチョウの卵が産下されている葉について、長さと幅、周囲の花序の成熟度合いから、5種類に分類した。産下されている卵数とその葉の高さを測定したところ、両種とも、展開を終えてから間がなく、面積の広い若い葉に好んで産下していることがわかった。一部の果実が成熟を始めた花序をつけた株は、両種から最も多く産卵されていた。スジグロシロチョウ卵の孵化率は、産下卵数の多い葉や株ほど高くなっていた。一方、モンシロチョウ卵の孵化率にそのような傾向はみられなかった。孵化に至らなかった卵は、アリやクモ、ダニによる捕食、卵寄生蜂による寄生、種内・種間での卵食が死亡要因であった。これらの結果をもとに、モンシロチョウとスジグロシロチョウの卵の分布様式を、食草の形態と産卵部位の関係から考察した。


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