| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-285

トカラ列島における陸産貝類相の構成とその要因

*市川志野,中島貴幸,片野田裕亮(鹿児島大・理工研),冨山清升,山本温彦,鈴木英治(鹿児島大・理)

トカラ列島は生物地理学上問題の多い地域として注目されてきた。陸産貝類についての研究も数多く行われており、動物相の比較や種内変異といった生物地理学的研究は行われているが、それぞれの島内において陸産貝類がどのように環境を反映して生息しているのかといったような、細かな分布についての研究は行われていない。そこで本研究ではトカラ列島口之島において詳細な分布調査を行い、陸産貝類相が島内においてどのような構成をしているのか、それがどのような要因によって成立しているのかについて検討することを目的とした。

各島の調査地を1.森林、2.海岸林、3.牧草地と大きく3つの環境に分類し陸産貝類の採集を行い、種数、出現種等を比較した。次に森林において10m×10mの調査区を19ヶ所設置し、陸産貝類の種数及び密度の調査と土壌の分析(カルシウム量、水分含量、pH)、植生調査、草本被度調査を行い、動物相の構成にそれぞれの環境要因がどのように影響を与えているのかについて検討を行った。

調査の結果、環境ごとに陸産貝類相の構成が異なり、特に牧草地の種数は森林や他の環境と比較して非常に少ないことがわかった。これらの占める面積が大きいことから島内の種構成に与える影響は大きいと考えられる。また森林の調査においては、いずれの環境要因も種数との間に有意な相関関係は見られなかった。さらに密度とそれぞれの環境要因との関係性について解析を行うと、土壌pHとの間に正の相関関係が見られた。1種1種に注目すると、その密度と環境要因との間に、正や負の相関関係が見られたが、種によって個体数の密度に影響を与える要因が異なるということが明らかになった。


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