| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-642

サクラソウの受粉から結実までに働く近交弱勢の関与遺伝子座数とその効果の解析

*北本尚子(筑波大・生命環境),本城正憲(東北農研),吉田康子(筑波大・生命環境),上野真義,津村義彦(森林総研),鷲谷いづみ(東大・環境生命),大澤良(筑波大・生命環境)

近交弱勢が野生集団の絶滅確率に及ぼす影響は研究者間で意見が分かれている。この影響を明らかにするためには、近交弱勢のダイナミクスに大きく影響すると考えられる有害遺伝子座数やその相乗効果などの遺伝的背景を明らかにする必要があるが、野生種を対象とした研究はほとんどない。そこで、絶滅危惧種であり連鎖地図の構築が進んでいるサクラソウを対象に、まず受粉から結実までに働く近交弱勢の関与遺伝子座数とその効果を推定した。

2008年春に筑波大学農林技術センターにて、連鎖地図を構築した家系から開花が同調した2個体を任意に選び、全きょうだい交配を行った。38花に人工授粉して得られた2524種子(平均66種子)から94種子を任意に選び、種子から直接DNAを抽出してSSR23座の遺伝子型を決定した。次に、各遺伝子座での分離比をカイ2乗検定し、歪みが有意であったSSRの連鎖群上の位置を確かめるとともに、連鎖している対立遺伝子の効果を推定した。

その結果、5ga044と2ca174、ga0343の3つの遺伝子座で有意な歪みが認められた(5ga044はp<0.001、残りはp<0.05)。5ga044と2ca174は、連鎖群1に3.3cMと近接して座乗し、ga0343は連鎖群3に座乗していた。このうち、2ca174(♀hk×♂hk)では同祖遺伝子kをホモ接合で持つ結実種子の出現頻度が期待値より29%少なかったことから、その近傍に近交弱勢に関与する遺伝子座があり、対立遺伝子kと有害遺伝子が連鎖している可能性が示唆された。他の2座については同祖遺伝子との関係は見られなかった。今後は、すべての連鎖群をカバーするようマーカー数を増やし、解析する予定である。


日本生態学会