| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-647

シデコブシの雌性繁殖成功と訪花昆虫の関係

鈴木節子(名大院生命農), 石田清(弘前大農), 戸丸信弘(名大院生命農)

虫媒植物は花の色や香りで送粉者を誘引し、蜜や花粉などの報酬を与え送粉の手助けをさせる。モクレン科樹木の花は蜜を分泌せず雌性先熟であるため雌期の花には送粉者に対する報酬がない。このような特徴を持つシデコブシにはどのような昆虫が訪花し、それらはシデコブシの繁殖成功にどのように貢献しているのだろうか?2003、2004年に集団内の5個体を対象に個花レベルの開花と結果・結実、訪花昆虫(個花の中で観察された昆虫数)の調査を行った。主な訪花昆虫はコウチュウ目(ハネカクシ科)、アザミウマ目、ハエ目に属する昆虫であった。訪花昆虫数のピークは個体の開花ピークよりやや遅く、これは開花がピークに達したことでより多くの昆虫が誘引されたためであると考えられる。個花の開花時期と個花の中で観察された昆虫数が雌性繁殖成功(結果率:果実数/花数、結実率:種子数/胚珠数;果実ごとに計算)に与える影響を一般化線形混合モデルで解析した。結果率は個花の開花時期が遅いほど高いが、訪花昆虫数の影響は有意ではなかった。一方、結実率は訪花昆虫数、特にコウチュウ目とアザミウマ目の昆虫数が有意な正の影響を与えており、また、個花の開花時期は早い方が結実率は高く、結果率とは反対の結果であった。本種においては、人工交配の結果、結果率は自家受粉でも他家受粉でも異ならないが、結実率は自家受粉で有意に低下することが報告されている。これらのことから、遅い開花時期には訪花昆虫数が増加するが、隣花受粉によって自殖の割合が増加するため結実率は低下し、それより早い時期には一斉開花によって誘引され他個体から飛来した昆虫により他家花粉がもたらされて結実率が上昇すると考えられる。


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