| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-651

エゴノキ属2種の種子生産における樹木個体間変異

*長瀬ほなみ(名古屋大・生命農),梶村恒(名古屋大・生命農)

植物の繁殖器官は、発育過程において連続的に生じる様々な要因によって死亡する。そして、これらの要因により、種子生産の変動性は大きくなる。本研究では、エゴノキおよびコハクウンボク(各12本)の繁殖器官の減少過程を樹木個体ごとに明らかにし、主要な死亡要因を特定した。さらに、変動主要因分析により、健全種子生産に樹木個体間変異をもたらす要因を検証した。

2004年〜2008年の固定トラップ調査の結果、両樹種ともに、2005年と2007年以外はほとんどの個体が開花しなかったことが明らかになった。この2年間における繁殖器官の減少過程について調べたところ、両樹種ともに、いずれの年も蕾や花などの初期の発育過程において8割以上が死亡していた。食害は、エゴノキでは蕾に多く、コハクウンボクでは未成熟果実に多くみられた。また、健全種子生産の樹木個体間変異は以下のような要因によって生じていることが示唆された。すなわち、エゴノキでは、2005年は未成熟果実や成熟果実の食害、2007年は成熟果実の変質であった。コハクウンボクでは、2005年は未成熟果実の食害、2007年は開花直後の発育不全や未成熟果実の食害であった。これらはいずれも主要な死亡要因ではなかった。

樹種間で食害の多い発育段階が異なり、エゴノキでは、蕾の食害が多く、果実の食害が少なかった。これは、コハクウンボクと比べ、果皮が厚く、サポニンなどの防御物質を多く含んでいるためと考えられる。しかしながら、量的には少ない果実の死亡が、健全種子生産の樹木個体間変異に影響をおよぼしていることが示唆された。


日本生態学会