| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-679

竹林拡大に伴う現存量と純生産量の変化

*臼井伸章(京大・農),小川遼,福島慶太郎(京大院・農),徳地直子(京大フィールド研)

近年、関東以西の里山地域においてモウソウチク林の拡大が数多く報告されている。モウソウチクは地下茎による栄養繁殖を行うクローナル植物であり、里山を構成する木本樹種とは異なる生活史をもつ。またモウソウチクは純林を形成するため、森林植生に大きな影響を与えると考えられるが、モウソウチク林の拡大が森林の物質循環などの生態系機能に与える影響を評価した研究は少ない。そこで本研究ではモウソウチク林の拡大に伴う生態系機能の変化を把握するための第一段階として、現存量及び地上部純生産量の推定を試みた。

調査地は京都府と大阪府の府境に位置する天王山で行った。本調査地はアカマツ・コナラを主とする薪炭林であったが、1970年頃よりほぼ放置され、加えてタケノコ価格の低下から竹林の手入れも不足し、モウソウチクの分布が拡大している。2005年4月にモウソウチクの割合の異なるプロット(20×20m) を4ヶ所P1(タケ胸高断面積;0%)、P2(22.4%)、P3(68.1%)、P4(99.9%)を設置し、3年間毎木調査(DBH≧1cm,H≧1.3)を行った。地上部・地下部現存量を広葉樹及び針葉樹に関しては既存の相対成長式から、モウソウチクに関しては伐倒・伐根を行い、アロメトリー式を作成し推定した。各プロットに開口面積0.26m2のリタートラップを5ヶ所ずつ設置し、年間リターフォール量を算出した。また、積上げ法により地上部純生産量を算出した。

モウソウチクの割合が高まるにつれ立木密度は増加し、現存量に占める地下部の割合は増加した。また地上部純生産量の年変動はモウソウチク侵入段階にあるP2、P3で大きかった。これらの結果とモウソウチクの生活史特性から竹林の拡大に伴う現存量及び純生産量の変化について考察する。


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