| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-681

チベット高山草原における標高傾度に伴う低木(金露梅)群落と生態系CO2フラックスの変化

*八代裕一郎, 志津庸子(岐阜大・流セ),廣田充(筑波大・菅セ),大塚俊之(岐阜大・流セ),下野綾子,沈海花(国環研・生物),杜明遠(農環研・大気),唐艶鴻(国環研・生物)

チベット高山草原は重要な炭素プールとして機能している。一方、高山草原は地球温暖化などの環境変動の影響を受けやすく、生態系の脆弱性が指摘されている。そのため、チベット高原における炭素動態を把握することが急務となっている。

チベット高山草原の典型的な草地型に金露梅(Potentilla fruticosa)が優占する高寒金露梅草地がある。金露梅は3200m-4000m地域に広く分布するバラ科の低木で、草本と異なる炭素循環機能があると考えられる。また、金露梅は標高により形態を変化させ、結果として群落構造も変化する。標高差により環境条件が変化することからも、標高傾度に伴う金露梅群落における炭素動態の変化を明らかにする必要がある。

本研究ではチベット高山草原において(1)金露梅の分布様式と形態を標高別(3400, 3600, 3800m a.s.l.)に明らかにし、(2)各標高の金露梅群落で、生態系CO2フラックス(CO<sb>2吸収速度、呼吸速度)を測定した。

金露梅の出現頻度は3400mで最大となり、標高が高くなるにつれて減少した。3400m, 3600m, 3800mにおいてその形態を調べたところ、3400mで樹高および被度、同化部量が大きかった。3600mと3800mでは明瞭な違いが見られなかった。生態系CO2フラックス(CO2吸収速度、呼吸速度)は、3400mでCO2吸収速度が大きい一方、生態系呼吸速度は各標高において違いは見られなかった。群落のCO2吸収速度は金露梅の同化部量に依存していた。これは金露梅形態の違いが群落レベルのCO2吸収量に大きな影響を与えていることを示している。


日本生態学会