| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-688

富士北麓冷温帯アカマツ林における土壌呼吸に占める根呼吸の推定

*根岸正弥(茨城大・理),廣田充(筑波大・菅平センター),中野隆志(山梨・環境研),大塚俊之(岐阜大・流域圏センター),山村靖夫(茨城大・理)

陸上生態系において土壌呼吸は炭素循環の中では最も大きな放出経路であり(Goulden et al. 1996)、NEPや土壌炭素動態に大きな影響を与えている。土壌呼吸は呼吸基質の異なる根呼吸と従属栄養生物呼吸に分類され、炭素動態を理解するためにこれらの呼吸を分離する必要がある。本研究では、富士北麓冷温帯に位置し、土壌の薄い溶岩流上に成立する約100年生アカマツ林にて、インタクト(非切断)での根呼吸測定を行い、切断後の根呼吸との差を検証した後に、実際の根呼吸量を推定し、土壌呼吸の分離および根の重要性の評価を目的とした。

2007年度に切断後の根呼吸速度を温度管理を行い測定したところ、温度に対して指数関数的相関を示した。そして、2008年度にインタクトでの根呼吸速度を測定したところ、サンプリングした根呼吸速度はインタクトに対して50〜80%の呼吸速度減少を示し、サンプリング後の根呼吸は過小評価である可能性が示唆された。また、温度依存性はサンプリングと比較すると関係性は弱く、実際の根呼吸は温度への依存は小さい可能性が示唆された。

サンプリング法によって推定された根呼吸量は年間平均2.01ton C ha-1、インタクトの根呼吸量は年間平均4.19ton C ha-1と推定され、その土壌呼吸(5.37ton C ha-1 yr-1)への寄与率はそれぞれサンプリングが37%であるのに対して、インタクトは78%であった。これらの結果より、根呼吸測定の際における切断の影響の大きさを考慮した測定の必要性と、本調査地における土壌呼吸への根呼吸の寄与の重要性を示した。


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