| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-695

落葉分解におけるCN比と樹種の違い

京大・フィールド研

落葉分解は林床や渓流など他生性有機物に依存した生態系において主要な炭素フラックスとなっている。この落葉分解を制御する要因としては水分や温度など外的環境の他に、落葉自身のCN比(窒素含量も含む)が重要とされてきた。しかし種の異なる落葉の間ではCN比以外の化学的組成(タンニンなど)や物理的構造(厚さ、強度など)も異なるため、種間比較の結果にはCN比以外の効果が含まれていると考えられる。

そこで本研究ではCN比がほぼ等しい落葉広葉樹3種の落葉(ケヤマハンノキ=21.3; オノエヤナギ=22.2; オオバヤナギ=18.9)を用いて、渓流でのリターバック分解実験(目合1cm)を行った。各リターバック回収時において、落葉の残存量と同時に、落葉片から放出される水生不完全菌類の種数と無性胞子(分生子)数を測定した。水生不完全菌類は、河川での落葉の生物的分解のうち約3分の1を担っており、また菌類が定着しない落葉は無脊椎動物が摂食しないことから、落葉分解の制御を通じて河川上流部の従属栄養的な物質循環において重要な役割を果たしている。

分解速度定数kはケヤマハンノキで0.025、オノエヤナギで0.012、オオバヤナギで0.033であった。実験期間中に出現した水生不完全菌類の種数および分生子放出速度は3樹種間ではほぼ一定であった。

これらの結果から落葉のCN比は水生不完全菌類の群集組成や活性には影響するものの、樹種間の分解速度の違いを説明する要因としては堅さなどCN比以外の要因がより大きく影響していると考えられた。


日本生態学会