| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-716

多雪地域冷温帯林における冬季積雪面二酸化炭素フラックスの経時観測.−岩手県安比高原ブナ二次林における事例−

小野賢二,安田幸生,森下智陽,金子真司,平井敬三(森林総合研究所)

岩手県安比高原にある安比森林気象観測共同試験地には気象観測タワーが設置され、ブナ林生態系における炭素フラックスの観測が行われている。土壌CO2フラックスは2004年より無積雪期のみ観測されてきたが、積雪期の観測は行われてこなかった。しかしながら、当試験地は1年の半分にあたる11月下旬から5月中旬まで積雪があり、最大で2m超の積雪が観測される多雪地域であるため、安比高原ブナ林の炭素循環量を通年で定量評価する上で積雪期におけるCO2フラックスを把握することは重要である。本研究では、岩手県安比高原ブナ二次林を対象とし、冬季積雪面CO2フラックスの経時観測を行った。また、冬季積雪面CO2フラックスには、積雪により形成される、積雪層内や地表付近の特殊な気象環境、ガス環境、積雪層内環境、土壌環境などが影響すると考えられる。そこで本研究では、積雪面CO2フラックス観測に加え、それに影響を与える気象要因や環境要因についても関連するデータの収集を行い、積雪面からのCO2発生プロセスに関しても検討を行うこととする。

具体的な調査方法は以下に示す。積雪面CO2フラックスは、赤外線ガス分析計、データロガーおよび閉鎖循環式自動開閉型チャンバーを組み合わせたシステムにて観測した。また、同時に気温、風速、気圧などの気象要素についても観測を行った。積雪面からのCO2フラックスに影響すると考えられる積雪層内の雪質、層別の容積重、積雪含水率は、1〜2週間おきに積雪層断面調査を行い、データを得た。積雪断面調査時には、同時に積雪層内空気の採取も行い、ガスクロマトグラフィによって採取した空気の分析を行い、積雪層内の二酸化炭素の濃度勾配に関するデータも得た。

本発表ではこれらのデータの解析結果から、冬季積雪面CO2フラックスと、その発生プロセスについて議論を行う予定である。


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