| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-720

土壌CO2フラックス空間依存性の森林と草地での比較

*橋本徹, 三浦覚(森林総研)

生態系炭素循環における主要な経路の一つである土壌CO2フラックスは、根呼吸と土壌微生物呼吸とからなり,複雑な空間パターンを示す。土壌CO2フラックスは連続変量であり、地点間の距離が近いほど強く関係しあう。しかし、その程度やパターンは立地やスケールによって様々である。土壌CO2フラックスを面的に評価するためには、そのような空間依存性の定量とその機構解明が重要である。森林では,樹木の根系が不均一に分布するため,土壌CO2フラックスの空間分布に対する樹木の影響が考えられる。そこで,土壌CO2フラックスの空間依存性を森林と草地で比較した。

調査は、岩手県安比高原にあるブナ二次林と芝生・ワラビなどが優占する草原で行った。どちらでも,緩斜面と平行に200mのラインを設定し、10m,1m,0.2m間隔でそれぞれ21個になるようにチャンバーを配置した。2004−05年の夏から秋にかけて、Li-cor社の携帯式土壌呼吸測定装置Li-820を用いて,密閉法により土壌CO2フラックスを測定した。土壌CO2フラックスの測定時に,チャンバーの近傍で地温と土壌体積含水率も測定した。

その結果、草地では土壌CO2フラックスの空間依存性が見られなかったのに対し,森林では5-11mのレンジ幅を取る空間依存性が認められた。土壌体積含水率でも森林のみで空間依存性が見られたが,その形状は2段階になっており,異なるスケールで空間依存性のあることが示唆された。地温では森林,草地の両方で空間依存性があったが,そのレンジ幅はブナ林区で長かった。これらの結果から,樹木の存在が土壌CO2フラックスの空間依存性に影響すること,また土壌CO2フラックスに影響する環境要因の空間依存性は土壌CO2フラックスのそれと異なること,がわかった。


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