| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-725

冷温帯における粗大木質リター(CWD)の炭素動態

*八木周一(岐阜大・院・応用生物),廣田充(筑波大・菅平センター),大塚俊之(岐阜大・流域研)

森林生態系の炭素の貯蔵庫や放出源として生木や土壌などの研究が進む一方、粗大木質リター(CWD)と呼ばれる倒木や立枯れ木は新たな炭素の貯蔵庫・放出源として注目を集めている。しかし、森林構造の違いがCWDの炭素動態にどのような影響を与えるかは詳しく解明されていない。そこで本研究では、森林構造の異なる林分においてCWDのプールとフラックスの機能が受ける影響の要因を解明することを目的とした。

調査は40年生のアカマツ林と60年生の混交林が隣接している筑波大学菅平高原実験センターの実験林で行った。各林分にコドラート(50m×50m)を設置し、森林構造とCWDの炭素プールとフラックスを求めた。CWDの炭素プールは調査区内のCWDの体積と仮比重を求めることで算出した。炭素フラックスは、切り出したCWDサンプルから密閉法を用いて放出量を求め、過去の毎木データから加入量を求めた。

アカマツ林と混交林の森林構造はそれぞれ、胸高直径が44.7、31.3 m2 ha-1で、幹密度は 1812、652本ha-1だった。CWDの炭素プールは2.65、1.19 tonC ha-1であった。フラックスは、放出量が0.23、0.07 tonC ha-1 yr-1で、加入量が0.33、0.09 tonC ha-1 yr-1であった。炭素プールとフラックスはいずれもアカマツ林の値が混交林の値を上回った。貯蔵量と放出量は樹種よりも量の違いによる差が大きく影響していた。このことからこの結果は加入量の違いに起因するものと思われる。この加入量の違いは、若いアカマツ林で見られる自己間引きによるCWD加入量の増加によるものと思われる。このことからCWDプールとフラックスは若いアカマツの加入量に大きく影響を受け、アカマツ林のほうが混交林よりも大きな値を示すことが示唆された。


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