| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-727

ミミズによる森林土壌の炭素蓄積パターンの変化- 14C天然存在比を用いた解析

*豊田鮎(自然研),陀安一郎(京大生態研),藤巻玲路,金子信博(横浜国大),内田昌男,柴田康行(国環研),日浦勉(北大苫小牧)

フトミミズ科のミミズは日本全土で頻繁に優占する。ミミズは落葉を減少させ物質循環を促進する機能が注目されてきたが、他にも土壌中に糞を増やす機能や穴を掘るなどの多様な機能をもっている。ミミズ糞の有機物の分解速度は、排出後をピークとして一時的に増加するが、時間の経過とともに停滞するので、長期的にはミミズが土壌に炭素を蓄積する作用をもつと予想される。

本研究は、炭素放射性同位体の天然存在比(Δ14C)を用いて土壌炭素動態に長期的な時間軸を導入し、ミミズなどの大型土壌動物の存在が炭素動態に与える影響を解明することを目的とした。

調査地である苫小牧研究林は火山灰の上に立地し、表層16cmの土壌層は最長で270年の炭素蓄積を受けたものである。調査プロットは大気中のΔ14Cが激増した1950年代以降に広葉樹から針葉樹(BC林分)、針葉樹から広葉樹に樹種交替した林分(CB林分)、および針葉樹であり続けた林分(CC林分)に設定し、深さ2cm刻みで土壌を採取した。ミミズ生息の有無は植生と密接な関係がある。そこで、過去の炭素が固定された年代情報と植生区分、土壌中のΔ14C値の関係から長期的な炭素動態にミミズが与える影響を検討した。

その結果、CC林分に比べCB・BC林分では、土壌深度に沿った炭素年代の推移がみられず炭素が上下に混合されており、ミミズの影響を示唆した。また、CB林分では最下層に1950年以前の炭素が見られるのに対し、BC林分では1950年以前の炭素の層はみられず、Δ14C値が深層まで平均化されていた。しかし、全体としてCBとBC林分のΔ14Cプロファイルは大きく変わらなかった。樹種交替の過程・土壌動物相の違いをもとに、苫小牧研究林における土壌炭素動態を推定する。


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