| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-728

熱帯雨林の地下部現存量推定と細根量の補正

*新山馨,梶本卓也,松浦陽次郎(森林総合研究所),山下多聞(島根大学),Azizi Ripin,Abd. Rahman Kassim, Nur Supardi Noor(マレーシア森林研究所)

熱帯多雨林の生産力や炭素収支を明らかにするためには、地下部現存量の測定は避けて通れない。しかし、大変な労力がかかるため、大径木を含む多数の樹木個体の地下部の現存量が実測されることは稀である。したがって個体レベルではもちろん、林分単位で面積あたりの地下部現存量が実測値を基に推定されることは稀である。マレーシア半島、パソー森林保護区の択伐林で、地下部の調査をする許可を得たので、2004年12月末から2005年9月にかけ、重機で胸高直径1 cmから116 cmまでの121個体を掘り取り、地下部の実測データを得た。これを基に地上部、地下部、それぞれの現存量推定のアロメトリー式を作成し、個体レベルの現存量推定値を積み上げることで林分レベルでの現存量推定を行った。また掘り取り中に失われた粗根(直径5mm以上)の量は切れた根の基部直径を測ることで補正した。さらに細根(直径5mm以下)の値をパイプモデルを基礎に加算し、地下部現存量の推定精度を高めた。これらの結果、毎木調査(DBH>5cm)した0.2ha規模の6プロットでの平均推定値は、地上部現存量が571.8 Mg/ha、地下部現存量が76.1 Mg/haとなった。すなわち地下部/地上部の値は平均で13%となった。しかしこれらの値はアロメトリー式と補正方法に依存しており、同じパソーで行われたIBPの地上部アロメトリー式(Kato et al. 1978)を使うと地上部現存量は平均442.0 Mg/ha、地下部/地上部は17%となる。粗根、細根ともに無補正の場合はこの値が14%となる。


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