| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-736

ヒノキ人工林の荒廃が土壌中の物質動態に与える影響

*高崎洋子,竹中千里,仁科一哉,肘井直樹(名大院・生命農),吉田智弘(東農工大)

近年、間伐等の管理が適切に行われず放置され、荒廃する人工林が増加している。間伐遅れのヒノキ人工林では、林冠が鬱閉し、林内の光環境が悪化する。それによって下層植生が衰退し、リターや表層土壌が流亡することが大きな問題となっている。リターや表層土壌は、有機物の分解者である土壌動物や土壌微生物の餌資源・生活空間として重要である。そのため、ヒノキ人工林の荒廃は、分解者の密度や種組成を変化させ、有機物の分解・無機化から植物の養分吸収に至る、土壌中の物質動態を変化させている可能性がある。そこで本研究では、ヒノキ人工林の荒廃が土壌中の物質動態に与える影響を評価することを目的とし、1)土壌動物、2)土壌中の栄養素濃度、3)リターの分解率、に焦点をあて調査した。

調査地は、三重県大紀町のヒノキ人工林内の2つの小流域(管理良好ヒノキ林(P2)と高密度ヒノキ林(P5))に設定した。1)土壌動物:各小流域より、2008年6月に土壌コアを、2008年7月に30×30 cm2区画内のリターを採取し、ツルグレン法により土壌動物を抽出して密度と種組成を調査した。2)土壌中の栄養素濃度:2008年6月に、各小流域において表層から10 cmの深さの土壌中にイオン交換樹脂バッグを埋設した。これらを9月に回収し、NO3-・NH4+・PO43-濃度を測定した。3)リターの分解率:2008年6月に、各小流域にリターバック(リター2樹種、メッシュサイズ2種類の計4種類)を設置。2008年9月、12月に回収し、幹重を測定した。

単位面積当たりのリター中・土壌中の土壌動物は、P2のほうがP5よりも密度が高く、分類群数も多い傾向にあった。この傾向は、特にリター中の土壌動物において顕著に見られた。しかし、リターの分解率は、P2とP5の間に明確な違いは見られなかった。


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