| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-351

中海水域における魚類の出現動態-「ます網」漁獲物からの解析-

*横尾俊博(島根大・汽水研),佐々木正(島根水技セ),岩崎健史,飯塚祐輔,野田圭太,田中智美,荒西太士(島根大・汽水研)

中海は,島根鳥取県境に位置する国内第5位の総面積86.2 km2の汽水湖である.近年,干拓事業の中止に伴って中海では水門の撤去や堤防の開削などが進行しており,当該水域の物理的かつ生態的環境は大きく変化しつつある.本研究では,中海に設置された小型定置網「ます網」の漁獲物データから,魚類の出現状況とその季節変化を検討した.調査方法は,中海の西岸に位置し一部を除いて堤防に囲まれた閉鎖性の高い本庄および中海の南岸に位置し本庄を囲む堤防の外側の東出雲の2定点において,2008年4月から毎月1回漁獲された全魚類を対象として,個体数を計数した上,体長を計測した.これら漁獲物データに基づいて当該水域における各種の出現様式を検討した結果,優占的に出現した種類はほぼ全季節にわたって出現する種であること,夏季を中心に短期間のみ出現する種が多いことが示された.また,本庄と東出雲では,個体数で優占する種はほぼ同じであったが,本庄で特に夏季に底生性魚類の種数が多いという傾向が認められた.さらに,本庄水域について1990年代の調査結果と比較した結果,年間を通じて出現した種数は過去とほぼ同数であり,夏季に種数が増加するという傾向も同様であったが,本調査では種数が増加している月数が過去と比較して少なく,当該水域における夏季の一時的な魚類の利用がより短期間になっている傾向が示された.


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