| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-354

栃木県奥日光における樹洞棲コウモリ3種の夏季ねぐらの比較

*吉倉智子(筑波大・院・生命環境),渡邉眞澄(東京農工大・農),上條隆志(筑波大・院・生命環境),安井さち子(つくば市並木)

コウモリ類は保育、冬眠、繁殖などの場として一生の大部分をねぐらで過ごす。適切なねぐら選択は個体の生存率と繁殖率を上げることに繋がる。著者らは2007年夏季に栃木県日光市奥日光において森林棲コウモリ類の夜間飛翔時における捕獲調査を行った。多い順に、モモジロコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、コテングコウモリ、ウサギコウモリが捕獲され、調査地域の優占種と考えられた。そこで本研究では、これらの4種のうち、樹木をねぐらとするといわれているヒメホオヒゲコウモリ,ウサギコウモリ,コテングコウモリの夏季における日中のねぐらの特徴を比較した。調査は2008年7月〜8月、ウサギコウモリ7個体、コテングコウモリ4個体に発信器を装着し、ラジオテレメトリー法によるねぐら探索を行った。ヒメホオヒゲコウモリについてはYasui et al.(2004)および福田ら(2006)が調査した12個体の結果を用いた。

特定されたねぐら部位は、ヒメホオヒゲコウモリが10ヶ所であるのに対し、ウサギコウモリが12ヶ所、コテングコウモリが4ヶ所であった。ねぐらのタイプは、ヒメホオヒゲコウモリは樹皮下(n=8)、ウサギコウモリは樹洞(n=10)、コテングコウモリは葉(n=3)を最も多く利用していた。樹木の枯損状態では、ヒメホオヒゲコウモリは枯死木、ウサギコウモリは生木を利用していた(フィッシャーの正確確率検定 P<0.01)。ねぐらの地上高はウサギコウモリよりもヒメホオヒゲコウモリの方が有意に高かった(U検定 P<0.05)。同所的に分布する樹洞棲コウモリ類において、ねぐらとしての資源が異なることが明かになった。


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