| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-361

東南アジア熱帯林におけるキノコ食昆虫の群集構造

山下 聡(京大),市岡 孝朗(京大)

担子菌類が形成する大型の子実体,いわゆるキノコは,さまざまな種類の昆虫により摂食される。多孔菌目(Polyporales)やタバコウロコタケ目(Hymenochaetales)などを含む多孔菌類はサルノコシカケ型の硬質の子実体を形成し,甲虫目をはじめとする昆虫と被食‐捕食関係にある。この関係を通じて菌類とキノコ食昆虫は共進化してきたものと考えられる。熱帯地域では生物間相互作用が強く働いていると考えられるため,この地域において菌類‐キノコ食昆虫相互作用系の共進化を明らかにしていくことが重要であるが,研究の蓄積がほとんど無い。そこで本研究では,サルノコシカケ型子実体にみられる昆虫群集の構造を明らかにする事を目的に東南アジア低地熱帯林で調査を行った。調査は2006年から2008年にかけて,マレーシア国サラワク州にあるランビルヒルズ国立公園で行われた。多孔菌類の子実体を採集し,そこから昆虫の成虫を採集した。ただし,アリとシロアリおよび飛翔性の昆虫は採集対象から除外した。マンネンタケ属(Ganoderma)やキコブタケ属(Phellinus)などの18属を含む約800個の子実体から鞘翅目や半翅目など約3500匹の昆虫が採集された。鞘翅目が優占し,ハネカクシ科(Staphylinidae),テントウムシダマシ科(Endomychidae)やゴミムシダマシ科(Tenebrionidae)の昆虫がみられた。個体数,種数とも多くの昆虫がマンネンタケ属を利用していた。発表では昆虫の資源利用様式について,菌類の菌糸体の構造と関連させて考察する。


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