| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-398

個体数変化と標識データに基づくマガンの個体群パラメータ推定

*森口紗千子(東大・農・生物多様性),天野達也(農環研),牛山克巳(宮島沼水鳥・湿地センター),藤田剛(東大・農・生物多様性),樋口広芳(東大・農・生物多様性)

個体群動態パラメータと個体群サイズの推定は、個体群管理に必要な基本的情報のひとつである。しかし、生存率、繁殖成功度、移出入率などの個体群動態パラメータは野外で十分なデータを得ることが難しく、正確に推定することがしばしば困難である。また、個体群サイズの推定には、大きな観察誤差が伴うことが多い。近年発展してきた個体数データと個体群動態データを1つのモデルに組み込むベイズモデルを用いた手法では、観察誤差を考慮しながら個体群動態パラメータと真の個体群サイズを同時に推定することが可能になった。

本研究では、日本で越冬するマガン個体群を対象とし、ベイズモデルを用いて個体群動態パラメータと個体群サイズ変化の推定を行なった。マガンは1970年初頭に約5000羽まで減少したが、その後急激に増加している。しかし越冬地や中継地としてマガンが利用する生息地は少なく、一極集中による小麦食害などの農業被害が問題となっている。推定した個体群動態パラメータを他の個体群や個体群の急増により問題となっている近縁種と比較することによって、将来的な個体群管理のための情報を提供することができるであろう。

個体数データには、環境省が行なっているガンカモ類一斉調査の1970年から2008年までの結果を用いた。生存率は首輪標識個体の観察データを用いて推定した。繁殖成功度の指標として、成幼比およびそれぞれの首輪標識個体における幼鳥数を用いて推定した。発表ではこの結果について議論する。


日本生態学会