| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-407

カワバタモロコの初期増殖速度と個体群動態

*田中哲夫(人と自然博),藤田茂宏(北攝オーデイオ),谷本卓弥(伊丹北高),山科ゆみ子(ホトケドジョウを守る会),三浦靖弘(藤井寺工高)

初期増殖速度:カワバタモロコの初期増殖能力を確認するため、干上がった池に雄雌各10個体を新たに導入しその後の数を追跡した。A池では一年後に5,318個体・二年後に5,703個体に、B池ではそれぞれ4,243個体・10,119個体に、C池ではそれぞれ1,210個体・1,984個体に増加した。絶滅過程:D池では、1996年から2000年にかけてジュンサイが優占していたが2001年に崩壊した。ジュンサイが崩壊した2001年に4,349個体、2002年・3,525、2003年・1,565、2004年・1,265、2005年・857、2006年・501、2007年・196個体と減少し、2008年4月に絶滅した。

植物プランクトン窒息説:植物プランクトンが大増殖すると夜間に底層付近が無酸素になり、藻などの構造物がない場合、産卵した卵また仔魚の多くは死滅するのではないか。

卵捕食自滅・カニバリズム説:導入初年には驚異的な増殖を示すが、以降はこれまた劇的な増殖低下が生じる。卵の想定捕食者の密度検討の結果、カワバタの増加によってこれらの密度は逆に小さくなる。麒麟麦酒ビオトープ池での調査結果では、産卵期(2007年5月31日)の10個体のカワバタ全てがカワバタ卵を捕食し、卵巣内卵781個・消化管内捕食卵916個という個体まで認められた。最大の捕食者はカワバタ自身であり、新規侵入池では爆発的に増加するが、以降は自身の卵捕食・カニバリズムによって自滅へと突き進んでいる。カワバタが、自身の卵を食い尽くすことが困難な構造を水陸移行帯の植物体が提供し、自滅のスピードを遅くしているだけではあるまいか。多くのコイ科魚類群集の卵捕食実態は、個体群の変動要因としてさらに調査されるべきである。


日本生態学会