| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-774

異なる時空間構造をもつ食物分布に対するジェネラリストの集合反応

*片山直樹(東大・農), 天野達也(農環技研),藤田剛, 樋口広芳(東大・農)

捕食者の採食時における意思決定則は空間スケールに依存するため、結果としての集合反応もしばしば空間スケールに依存する。一般に、捕食者は局所スケールでは直接探索によって食物の豊富なパッチに集まる。しかし、広域スケールでは移動コストが増すため、過去の記憶によって豊富さが変化しにくい(持続性の高い)パッチに集まることが知られる。

このため、分布様式の異なる複数の生物種を捕食するジェネラリスト集団は、広域スケールでは持続性の高い食物種に、局所スケールでは豊富な食物種に反応する可能性がある。本研究は、水田地帯において主にオタマジャクシやドジョウ等の魚類を捕食するチュウサギを対象とし、上記の仮説を検証した。

調査は、茨城県霞ヶ浦付近の水田地帯で行った。2007年5月〜6月に、チュウサギの食物内容を直接観察した結果、5月前半は主にドジョウなどの魚類を、5月後半以降は主にオタマジャクシを採食していた。2008年5月後半〜6月に、チュウサギと食物種の空間分布を3回調査した。広域スケールとして4地区(約1km)を設定し、各地区で12枚の水田(数十m)を調査した。結果、広域スケールでは、オタマジャクシ分布は調査日によって大きく変化したのに対し、ドジョウ分布は大きく変化しなかった。チュウサギは広域スケールではいつでもドジョウ(等の魚類)が豊富な場所に多く、局所スケールでは6月後半のみだがオタマジャクシの豊富な場所に多かった。

チュウサギ集団は、広域スケールでは過去の記憶によって持続性の高いドジョウ分布に、局所スケールでは探索行動によって豊富なオタマジャクシ分布に反応した可能性が示唆された。本研究は、ジェネラリスト集団の空間分布を理解するために、空間スケールによって異なる複数餌種の分布様式に着目することの有効性を示したといえる。


日本生態学会