| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-784

ハマグリの移動分散 ・・・ 漁場から泳いで逃げる?

*逸見泰久(熊本大・沿岸域センター), 高日新也(熊本大・理)

ハマグリ Meretrix lusoria は,水管の基部にある粘液線から粘液糸を分泌し, それを潮流に引かせて移動する.この現象は古くから知られ,粘液を分泌するようすは『蜃気楼』の語源にもなっている.本研究は熊本市白川河口干潟でハマグリの粘液による移動分散の詳細を明らかにしたものである.

まず,河口の転石帯に漂着したハマグリを毎月大潮の日に採集した.その結果,漂着は3〜6月に多く,9〜12月にはほとんど見られないことがわかった.また,大潮から小潮にかけて連続採集を行ったところ,漂着は大潮時に多く,特に春の大潮時には50mの調査ラインに合計500個体以上のハマグリが流れ着いた.なお,白川河口は漁獲圧が高いため殻長30mm以上のハマグリは少ないが,漂着したハマグリの大部分は殻長30〜40mmで,これらのサイズで粘液による移動が盛んなことがわかった.実際,水槽で飼育するとこのサイズのハマグリで粘液分泌が盛んであった.さらに,漂着したハマグリは干潟から採集したハマグリに比べやせていたが,これは粘液の放出によってやせたのではなく,むしろやせた個体が積極的に移動した結果であることがわかった.

ハマグリの稚貝は河川内や澪周辺に着底し,その後,成長するにつれて周辺海域に移動するが,稚貝は大雨時に流されて受動的・一方向に移動するのに対し,成貝は粘液を分泌して潮の干満に乗り能動的・双方向に移動分散することが示唆された.


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