| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-828

スイゲンゼニタナゴとカゼトゲタナゴの繁殖生態

*北村淳一(観音崎自然博物館),阿部 司(岡山大・院・理),中島 淳(九大・工)

岡山県吉井川水系に生息する絶滅危惧IA類で国内希少野生動植物種のスイゲンゼニタナゴと福岡県矢部川水系に生息する絶滅危惧IB類のカゼトゲタナゴの繁殖生態について野外調査し,両亜種間の比較を行った.両水系には,他のタナゴ類の種であるバラタナゴ・アブラボテ・ヤリタナゴ・タビラ・カネヒラも生息している.両亜種とも産卵期は3月から8月までの間であった.成熟個体の標準体長は最小25 mm,完熟卵保有時の産卵管の長さは平均13.6 mm,孕卵数は最大16個,完熟卵は電球形(長径2.8 mm,短径1.5 mm),卵体積は約3.2 mm3だった.孕卵数,完熟卵保有時の産卵管長,卵体積は体長と正の相関し,経月変化した.スイゲンゼニタナゴはカゼトゲタナゴより成熟体サイズが小さく,完熟卵保有時の産卵管が長く,小さく太った卵をもっていた.両亜種は他種のタナゴ類が利用しない小さな貝の鰓の水管側水路内に,1回に数個の卵を産み込む特異的な繁殖生態をもっていることが明らかになった.


日本生態学会