| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-841

絶滅危惧植物シラタマホシクサの開花と種子生産パターン

増田理子(名工大・社会工学),深川忠政(名工大・社会工学)

シラタマホシクサは東海地方の湿地に固有な絶滅危惧植物である.宅地開発,都市交通網の整備などで生育地がこの50年ほどの間に急激に減少し,この50年の生育地の現象確率は50%ほどであることが報告されている.この急激な生育地の減少から,地域間の分断化が進み,また,宅地造成などにより近辺の里山などが開発され生育地の孤立化が問題となりつつある.そこで,シラタマホシクサの個体群が孤立化することによって種子生産にはどのような影響が有るのかについて調査を行った.

調査期間はH18年〜H20年の3年間,東海地方のシラタマホシクサの生育地8カ所を調査地とした,各個体群で開花が確認された日から7日ごとに開花している花茎にマークをし,開花終了まで続けた.その後結実が終了してからそれぞれの集団からマーキングしたすべての個体をサンプリングし,個体ごとに各花茎で生産された種子数を計数した.また,開花期初期,中期,後期にそれぞれ早朝から夕方にかけてポリネータの調査も同時に行った.

その結果,結実率は個体群の開花数には関係なく,天候などの外的要因が大きく働くことが示された.また,結実率については,天候などの問題に加え,湿地の周りの生育地の環境が大きく働いていることが示された.結実率の高い個体群では,湿地周りの里山が多く残されていることが特徴的であった.また,外来種などが多く確認される場所ではポリネータが訪花しないことも観察された.

このため,種子生産を高め,個体群の維持を考慮する場合には,湿地の保全だけでなく里山などの周りの環境の保全も重要であることが示された.


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