| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S14-5

生態系の持続性指標としての群集組成

*長谷川元洋,服部力,末吉昌宏(森林総研),吉田智弘(東京農工大)

ボルネオ島の熱帯雨林の多くは生産林であるが、その生物群集の多様性を維持するような森林施業が必要である。デラマコット保護区では、樹木資源を持続的に利用するため低インパクト施業(RIL)が実施されており、様々な生物群において、この施業がその多様性の保護に有効かを検証する手法が求められている。

施業前に、施業する地域を選定する調査に適切なものとして、広域な調査が効率的であるほ乳類があげられる。一方、施業後に、生物多様性を保つような施業が行われたかを局所的にチェックするモニタリングに適切な対象としては、簡便で相補性のある分類群である分解者が有効であると考えられる。本研究では施業が硬質菌、各種土壌動物、アリ類に与える影響を検証した。その結果、どの分類群においても、RILの群集は原生林のそれと似た組成を持つことが確認され、従来型の伐採を行った区は異なる群集を持つことが分かった。また、個体数、種数に加え、種組成に着目することで、より鋭敏なチェックが可能であることが示唆された。デラマコットにおけるRILでは、樹木資源のための制限が、樹木群集の組成の維持につながり、さらに分解者の群集も良く保たれている結果となった。このように、生物群集の構造を維持するような施業を行う事ができるならば、その生態系自身も比較的持続的になると予測される。

熱帯林の施業が生物多様性に与える影響は、施業を行う土地の生物相の特徴や利用の履歴、施業の形態により、異なることが予測される。本研究で用いた分解者はどの熱帯林にも豊富に生息する生態系の一要素である。従って、同様の低インパクト施業を熱帯の他の地域に広げる場合には、分解者等の群集組成に与える影響を今回用いた様な手法で確認し、施業の適用が可能か判断するよう提案したい。


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