| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S19-1

観測からプロセス研究そして全球モデルまで:その近年の動向

和田英太郎(地球フロンティア)

「観測からプロセス研究そして全球モデルまで:その近年の動向」

和田英太郎 生態系変動予測プログラム

            地球環境フロンティア研究センター、海洋研究開発機構

地球環境研究の50年史を眺めると、大気二酸化炭素の増加に伴って温暖化や生態系の破壊に関する環境問題が顕在化している。1992年のリオサミットでは地球温暖化条約と生物多様性条約が締結された。2002年のヨハネスブルグサミットを経て、2005年2月16日には地球観測国際戦略10年計画(GEOSS: Global Earth Observation of the System of Systems)も策定された。現在は全地球測網の整備が進みだし、衛星観測やロボットブイ、そしてスーパーコンピュターを用いた地球環境変動のモデル化と未来を予測研究が急速に進む時代となっている。

これからの野外調査の研究から問題解決のための対策シナリオ提示の仕組みは、次のようになると思われる。先ず自然界の精度の高い観測・調査を行い、環境の健全さを測る指標や環境容量を定める。さらに色々な切り口をまとめて信頼性の高いシナリオを提示する。ここで初めて社会との結びつきが可能となり、わかりやすい形で住民参加や順応的管理に繋げられる。現在急速に発展中の観測・モデル・シミュレーションの三位一体の研究は明日の生態系を考え、社会が環境変動に対処する具体策を構築する入り口に位置していると言える。ヒトの社会はその歴史上初めて観測から社会システムの形成に至るハードル越えることに挑戦しようとしている。 

いま求められている生態学の研究は、基礎的な理解を政策立案を可能とするシナリオ提示型までつなげることではないかと思われる。


日本生態学会