| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S21-5

気仙沼での漁業者の実践について

畠山重篤 (気仙沼「牡蠣の森を慕う会」/京大・フィールド研)

私は宮城県気仙沼湾で牡蠣の養殖を生業とする一漁民です。昭和22年、父が小さな養殖場を創業し、私が二代目、今三代目の息子が跡を継いでいます。孫も4人生まれ、小学1年生の孫が跡を継げば家業は百年続くことになります。他の養殖業と比べ経営が比較的安定しているのは、餌代がいっさいかからないことと、種苗が天然採苗で安定的に採れ、安価であることです。

本大会の会場が盛岡であることは、森里海のつながりを探る上で大きな意義があります。それは、牡蠣の天然採苗世界一の産地が北上川河口の石巻湾、それに連なる万石浦だからです。この種苗は宮城県の海で採れるので宮城種(みやぎだね)と呼ばれていますが、成長が早く、病気に強く、味が良いという素晴らしい性質の牡蠣なのです。北海道から九州までの国内の産地はもとより、アメリカ西海岸、フランス、ニュージーランド、タスマニア、韓国、中国など、世界の主産地で養殖されている牡蠣こそ、宮城種なのです。奥羽山脈、北上山地の森林の養分が北上川を通して石巻湾に注ぎ、牡蠣の餌となる植物プランクトンを育んでいます。「牡蠣は森のしずく」と表現した人がいますが、森里海のつながりを牡蠣に語らせれば明解です。

著書:

「森は海の恋人」「リアスの海辺から」(文春文庫)

「牡蠣礼讃」(文春新書)

「日本汽水紀行」「鉄が地球温暖化を防ぐ」(文藝春秋)

「漁師さんの森づくり」「カキじいさんとしげぼう」(講談社)


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