| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T05-3
樹冠構造の種間変異は特に光資源の変化に沿って生じることが多くの研究で示されてきたが、熱帯林では種の豊富さのために群集レベルでの検証が難しく、対象樹種やサイズによって報告が異なる。本研究では、樹冠構造における種間変異が存在するのか、それらの変異が光獲得と関わる樹種特性と関連しているのかを群集レベルで検討した。
パソ50 ha plotにおいて、多様な樹種及びサイズを包括するように、200樹種4000個体を対象とし、幹直径、樹高、最下葉群高、樹冠幅を測定した。各関係をモデル式にあてはめ、階層ベイズモデルを用いて200樹種全体および樹種ごとのパラメータの事後分布を推定した。また、幹直径データから算出した最大サイズ、耐陰性、優占度の指標を樹種特性としてモデル式に組み込んだ。
樹冠構造において200樹種全体の傾向から大きく外れた樹種差をもつ樹種は限られていた。樹冠構造の樹種差と優占度との関連は見られなかったが、最大サイズと耐陰性は強く関連しており、林内の光獲得と関わる樹種特性と樹冠構造が対応していることがわかった。
そこで、林分(20 m × 20 m)単位で注目した場合の樹種差の重要性について検討した。幹直径のデータに基づき、群集全体の傾向のみを考慮した林分、樹種差を考慮した林分、そして実際に調査区内の全個体を測定した林分の3つの場合について推定した樹冠密度を比較した。その結果、樹種差の有無に関わらず、実際に測定した場合よりも高層部の樹冠密度が過小推定され、樹種差を考慮した場合の方が実測値に近い密度分布をもった。この樹冠密度の推定差異は、他の特性による樹種差及び個体差に起因すると察した。