| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T07-2
亜高山針葉樹林が環太平洋の北東アジアと北米西部という地域的広がりの中でどのような位置づけになるのか。そのことが気候的な極相林の針葉樹林を欠く偽高山帯の成立にも関係してくる。その針葉樹の主役はオオシラビソで、シラビソ、トウヒ、コメツガとともに日本固有種として主に本州の上部山地帯から亜高山帯に常緑針葉樹林を形成している。モミ属、トウヒ属、ツガ属の優占する針葉樹林は温帯から北方帯に広がりを見せるが、とくに北方帯においては沿海部の海洋性気候下に成立しており、ユーラシアの大陸性気候下のカラマツ属の優占するライトタイガと対照的な分布を示している。北東アジアではシベリアタイガの多くを占めるグイマツ林;Larix cajanderiに対して、ロシアの沿海州にAbies nephrolepis-Picea jezoensis林、カムチャツカの内陸、サハリン、北海道にAbies sachalinensis-Picea jezoensis林、主に本州にAbies veitchii-Abies mariesii林が成立している。太平洋を挟んで北米西部の温帯から北方帯にもモミ属、トウヒ属、ツガ属を主とする常緑針葉樹林が広がりをみせる。その中でオオシラビソに近縁なAbies amabilisは温帯の山岳から北方帯南部の沿海部山地に海洋性気候下の針葉樹林を形成している。大陸度指数が20以下で、冬季の積雪の多い海洋性気候がこれらの常緑針葉樹林の成立に大きく関わっていることは明白である。さらに植生の種組成に基づいた共通点と相違点から日本海側多雪地に分化したオオシラビソ林の地理学的な位置づけを明らかにしていくことができる。