| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T07-3
「偽高山帯」と呼ばれる針葉樹林欠落型の亜高山帯植生の成因を植生史の視点から考察を加えるようになったのは,1970年代中頃からである。このころは,最終氷期にあった針葉樹林が後氷期の温暖・多雪化によって衰退した結果,偽高山帯が成立したと考えた。1980年代になると,後氷期の気候最暖期に垂直分布帯が現在よりも上昇した影響を論拠とする説が提唱されるようになった。その後,最終氷期から後氷期へと移り変わる時,それまで低地にあった針葉樹林が壊滅的に衰退した結果,山岳上部に森林空白域が生じ,空白域が現在も残っているのが偽高山帯とする説も登場した。
これらの諸説を考える時,以下の3点が問題となる。
1)現在の針葉樹林と最終氷期の針葉樹林の樹種構成について
2)後氷期の気候温暖期における垂直分布帯について
3)後氷期の亜高山帯針葉樹林の分布拡大期について
現在までに報告された各地の大型植物遺体や花粉分析の結果をもとに ,以上3つの視点から 東北日本における亜高山帯の植生変遷史について論議する。