| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T10-4

外生菌根菌はどのように多様になったか 〜トリュフ型キノコを例とした考察〜

木下晃彦(東京大・アジアセンター)

120年前に植物の根に菌類が共生することが知られてから今日まで、生態系の発達過程、維持、機構を語る上で、菌根菌は欠かせない存在であることが証明されてきた。さらに近年の分子生物学的手法の導入によって、植物の進化や多様化のパターンにも、菌根菌が深い関わりをもつことが分かってきている。

森林生態系をつくる樹種には外生菌根菌がおもに共生する。現在、外生菌根菌は世界で6000種と推定され、このなかにはトリュフなど多くの食用キノコも含まれている。しかし実状では、欧米を中心とした種多様性の把握が進む一方で、日本をはじめアジア域における研究はまだ緒についたばかりである。外生菌根菌がどのような進化の道をたどり、多様化してきたのかを明らかにするためには、アジア域における種多様性の解明が不可欠である。さらに、アジア域の森林生態系の成り立ちを理解する上でも重要な課題といえる。

外生菌根菌であるトリュフ(Tuber spp.)は北半球を中心に広い分布域をもち、これまで欧州を中心に、世界で86種が記載されている。地中に子実体を形成するため、胞子の分散には、溶解後の自然拡散や土壌動物による摂食に頼る特性がある。このため、樹木−トリュフの連結による多様化パターンを考える材料としても興味深い。本講演では、外生菌根菌の起源と多様化の解明をおもなテーマとし、トリュフを題材に、日本における種数や系統的位置を明らかにした結果とともに、どこを起源として端を発し、どのように進化し多様化してきたのかについて、いくつかの海外の研究事例もまじえて紹介する。


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