| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T14-1
ニセアカシア(Robinia pseudoacacia L.)は生活史の各段階で非常に興味のある生態的特性を持っている。種子には秋の種子散布段階で発芽能力を持っている種子と硬い種皮に覆われた硬実種子の2種のタイプが見られる。後者は、翌春も発芽することなく土壌中に埋土種子集団を形成する。種子の発芽時期は自然条件の下では一定せず、撹乱が発芽の引き金になっている。河川周辺では春から秋の洪水の後に新しい砂礫堆積地で一斉に発芽するのが見られる。ただし、樹冠のうっぺいした林床下では発芽は見られない。発芽当年の個体サイズは数cmと小さいものの翌年以降の初期成長は非常に早く、3年ほどで2−3mに成長し、開花が開始される。これらの早い成長は、恵まれた光条件のもとでの高い光合成速度に依存している。繁殖は種子繁殖の他に、根萌芽による栄養繁殖を行っている。伐採などの外因的要因によって長い地下の水平根から大量の根萌芽を発生させる。これらの根萌芽は比較的浅い根から発生する。根萌芽の発生は内因的要因によっても発生している。林縁から林外に向かって伸長した根系から根萌芽が発生し、ニセアカシアのパッチは拡大していく。以上のように、外来種ニセアカシアは河川をとおした種子散布、および根萌芽により、自然撹乱をその繁殖の機会として上流域から下流域へその分布範囲を拡大してきた。