| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T14-4

ニセアカシアは河川敷では実生で増えているのか

福田真由子(日本自然保護協会)

北米原産の樹木ニセアカシアは,特に河川敷ではその分布拡大が目立つことから種子が河川の流れによって散布されているのではないかと言われていたが,2001年東邦大大学院在学していた当時,実際の研究がなかったため,河川でのニセアカシアの侵入過程を明らかにするため調査を行った.

調査は荒川中流域に位置する埼玉県熊谷市の荒川大麻生公園内の中州で行った.

2001年9月の増水による撹乱で堆積裸地ができ,様々な粒径の堆積物を含むように方形区を設け,各増水後に方形区内すべての発芽個体数を調査した.特に実生密度の高い3ヵ所については,方形区内にさらに小方形区A,B,C,を設け,その中で発芽した個体全てに標識をつけて,発芽時期が異なる3つの実生集団について追跡調査を行った.

調査期間(2001年9月〜2006年12月)に,調査地の中州が河川の増水によって水没し,土砂が広範囲に堆積したのは,2001年9月,2002年7月, 10月の3回で,いずれも台風によるものであった.発芽は増水の後に一斉に見られ,それ以外の時期では見られなかったため,増水による撹乱がニセアカシアの発芽を促進していると考えられた.各増水の後に発芽した実生個体群の翌年6月までの生存率を調べた結果,早い時期に発芽したものから高くなり,10月に発芽したものはほとんど死亡した.このことから,10月の増水では,ニセアカシアの成長には遅すぎると思われ,増水の撹乱の時期も重要になっていることがわかった.2003年から大きな増水がなく2006年12月までほとんどが生き残り,ニセアカシアは河川域では増水による撹乱作用により,主に種子で更新していることが明らかとなった.


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