| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T14-5
ニセアカシア(Robinia pseudoacacia L.)は、明治期より養蜂業における蜜源植物、貧栄養な土地でも良く育つ緑化樹として利用されてきた。しかし一方で旺盛な繁殖力が問題視され要注意外来生物(環境省)に指定されている。ニセアカシアの適切な管理方法を確立するため、その生理生態的な特徴の解明が求められている。特に、ニセアカシアの光利用特性については不明な点が多い。ひとつは、生育期間を通した光−光合成特性の変化、もうひとつは、個葉内の窒素分配である。そこで、相対照度が80%以上の場所(林外)と相対照度が25%未満の場所(林内)に生育するニセアカシアの幼木(樹高≦4m)各6個体を対象に、2008年5月中旬に展開した葉の光飽和時の純光合成速度(Psat)、葉の窒素含有量(Narea)と窒素分配率を6月から10月まで計測した。Psatは、林外では7月に最大となり、明瞭な季節変化を示した。しかし林内では季節による変化は少なく、林外に比べPsatは低かった。Nareaは、6〜9月は季節変化が認められなかったが、落葉期の10月に最大となった。年間をとおしてNareaは林外>林内となった。葉内の窒素分配率は、葉の発達段階である6月から7月にかけては光合成系全体への分配率が増加したが、葉の成熟した7月から9月にかけては窒素分配率に季節変化はなかった。また、光環境の違いによる窒素分配率の差異はなかった。10月になると林外・林内ともに光合成系への窒素分配率は大きく低下し、林内個体でも集光系への窒素分配率が低くなった。年間をとおして、林外・林内での窒素分配率は殆ど差異が無かったことから、ニセアカシアは、弱光環境下において少ない光を集めるような戦略ではなく、攪乱などによる光環境の改善が起こるまで窒素を蓄えて待機することで、攪乱時に急速に成長する戦略をとっていることが示唆された。