| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T14-6

ニセアカシア人工林における植物種の多様性

*眞坂一彦,山田健四(北海道立林業試験場)

北米原産のマメ科高木種であるニセアカシアは,アレロパシーや土壌への窒素の大量供給などによって,在来植物を圧迫するため,侵略的外来種とみなされている。しかしながら,ニセアカシア林内における在来植物相については,今のところ断片的な知見しかなく,実際に在来植物を圧迫・駆逐したという報告はない。もし,アレロパシーや土壌への窒素の大量供給によって在来植物が圧迫・駆逐されるのであれば,林齢の増加とともに,在来植物の多様性は低下するはずである。この仮説を検証するため,北海道の空知・石狩地域において,ニセアカシア人工林(34年生〜94年生)の林冠木構成種や林床植物の調査を行った。

調査の結果,ニセアカシア人工林内には計27種の在来木本類が出現し,その最大dbhは林齢の増加とともに有意に大きくなり,ニセアカシアの最大dbhとほぼ同様であった。この結果は,在来木本類が,ニセアカシアの植栽後早い段階で人工林内に定着し,ニセアカシアに排除されることなく,ニセアカシアとともに大きくなったことを示唆している。一方,下層植生は全部で43種出現し,調査区あたりの出現種数は林齢の増加とともに飽和曲線を描くような増加パターンを示した。この結果は,「林齢の増加とともに,在来植物の多様性は低下する」という仮説と矛盾する。なお,他の外来植物は出現しなかった。

このとき,林齢が近い林分間で下層植生の出現種数が異なったが,これはササ類が,ササ類以外の下層植生を被圧しているという説明が可能かもしれない。そのササの被度は,林分葉量と比例関係にあると考えられる林分胸高断面積合計とのあいだに有意な負の相関が認められた。この結果から,林分の成長とともに林分葉量が増加することでササの被度が低下し,そしてそれが他の下層植生の侵入・定着を許す状況をつくっているものと推察された。


日本生態学会