| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T16-3

理論的観点から見た一斉開花結実の進化

*立木 佑弥(九大・シス生), 巌佐 庸(九大・理)

一斉開花結実を考える資源収支モデルによると、毎年の資源獲得と繁殖時の資源投資のバランスにより間欠的な繁殖が生じ、花粉交換による個木の蓄積資源量の平均化によって同期繁殖が実現する。繁殖時の資源投資量は資源投資係数kというパラメータで決まり、これは繁殖閾値を超えた資源量に対する繁殖(花と果実)への資源投資量の比として表される。これが大きな値に進化する事で、間欠的な繁殖が進化する。

本講演では、このモデルに従って繁殖する樹木について一斉開花結実が進化する条件を議論する。森林は有限個のサイトからなり、各サイトは一本の成熟した樹木によって占められるとした。ランダムに生じる倒木の後のギャップが種子から発芽した実生によって埋められる。同調繁殖をすると、受粉率の改善や種子捕食者からのエスケープによって生存する実生をつくる効率が改善される。

[1] このような有利さにもかかわらず、ギャップがその年に散布された種子からでた幼樹によって埋められる場合には、間欠繁殖は進化しなかった。それは成り年には生存する実生数が増えても、それがギャップを獲得する競争が厳しくなるために有利さが消えるからである。

[2] そこで、実生バンクを考えた。ある年に生産された種子は実生として数年に渡り生存する事ができ、ギャップ獲得競争に参加できるようになる。この場合、実生の生存率が高くなると間欠繁殖が進化する事がわかった。

以上より、実生バンクを形成しないギャップ依存種は成り年を示さないことが説明される。また一斉開花の進化を考える場合、受粉率や種子の生存率だけではなく、種子の定着や実生バンクの形成、ギャップダイナミクスまでを考慮する必要があることがわかる。樹木が耐陰性を獲得した時点で間欠繁殖が自動的に進化した事が示唆される。

時間があればポリネータの共有による種を超えた繁殖同調についても議論したい。


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